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キャンパス内にMIDIキーボードを持ち込んで作業! 現役大学生作曲家のリアルに迫る

現役大学生として学業をこなしながら、人気声優への楽曲提供などプロ作曲家としての道を駆け上がる滝川龍聖さんにインタビュー。

著者:MuseMate編集部  2023/05/23  無料

——次の世代の音楽家を発見したい人や、音楽家を志す人にはぜひ読んでほしいMuseMateマガジンの新シリーズ「ネクスト・ミュージシャンズ」第一弾。今回は作曲家として活動し、人気声優のアルバムへの楽曲提供も行う滝川龍聖さん。なんと彼は現役の大学生。作曲家の仕事と学業の両立など、若手音楽家のリアルを深堀りしていく。

初めて使ったソフトは「domino」中学時代から作曲を始める

MuseMate編集部(以下、MM):本日はよろしくお願いします。まずはじめに簡単に自己紹介をお願いします。

滝川:滝川龍聖と申します。今は23歳で、大学に通いながら作編曲をしています。

MM:作曲家になった経緯や、作曲を始めた時期を教えて下さい。

滝川:作曲は中学1年生の頃から始めたのですが、その時はdominoというソフトを使っていてGM音源(一昔前のカラオケで使われていたような音源)しか鳴らすことができませんでした。その後、中学3年生のときにMusic Maker MX2というソフトを購入してから本格的に作曲を始めました。

MM:今はどんなDAWを使っているのですか?

滝川:今はCubase Proです。Music Maker MX2で作曲するのが限界になってしまったので、高校1年生のときに学割価格で買いました。学割といってもそこそこ値は張りますね。

「和音はないの?」友人の指摘で革命が起きる

MM:作曲の勉強はどのように始めたのでしょうか?

滝川:最初は何もできなかったですね。手当たり次第にDAWで音を入力していましたがなかなかうまく行かなかったので、まずは「ヘロホイニトハ」みたいに調を覚えるところから勉強を始めました。基本的にはインターネットで調べて勉強していました。

MM:作曲を始めたきっかけは何だったのですか?

滝川:太鼓の達人というリズムゲームが当時大好きで、ちょうど楽曲公募を行っているのを見つけ、「自分もこのゲームに関わりたい」という気持ちで始めました。そのときは応募しなかったのですが、数年後また開催されるとの情報を聞いてすぐに楽曲制作を始め、一曲完成させました。ところが応募前に吹奏楽部の友人に聞かせたら「和音はないの?」と言われたんです。そのときの音源は、メロディー、ベース、ドラムしか打ち込んでいなかったので、最初は「和音って何?」となったんですよね。作曲を始めてから2年間くらいずっと和音というものを知らずに楽曲を作っていました。

MM:確かに最初は分からないことだらけですよね。

滝川:元々趣味でピアノを弾いていたんですが、音を重ねることなんて当たり前すぎて作曲する時に出てこないという感じでした。

MM:それで和音も覚えてどんどん作曲にのめり込んでいったと。

滝川:そうですね、和音を覚えたらもう革命的でした。音に厚みが出たって実感しました。

「あなたらしいね」と言われるのが苦手。自分が作ったことのない曲を聴く日々

MM:その太鼓の達人の公募は通ったのですか?

滝川:先ほどの話は2015年のことだったんですが、惨敗しましたね。その次の公募は2019年だったんですが、ホームページで準佳作として表彰されるくらいにはなりました。

MM:その頃から今に至るまでの作風の変遷について教えてもらえますか?

滝川:昔から「あなたらしいね」と言われるのがすごく苦手だったんです。自分らしさっていうのがダメだと思い込んでいたので、昔は曲がうまく作れませんでした。自分らしさを無くそうとして、自分があまり作ったことがないような曲をたくさん聴いて、それを作って……みたいなことを繰り返して今のようになってきたんだと思います。

プロの現場の「真剣さ」に圧倒される。仕事として音楽に向き合うこと。

MM:音楽の道に進もうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

滝川:作曲を始めた頃から漠然と音楽で生活していきたいという気持ちはあったんですけど、当時はリズムゲームの作曲家になりたいと思っていたんです。そこでアイドルマスターシンデレラガールズというコンテンツに出会ったんですが、その中のある曲にめちゃくちゃハマりまして。そこからはアイドルの名前も知らないのに曲だけ漁って聴いたりしていて、そこからアニメソングとかその辺りの作家になりたいと思いはじめました。それと、その頃音楽理論について調べていたら「いきいき音楽科」のYouTubeチャンネルを見つけました。アニソンの楽曲分析の動画を見るうちに、自分でもそういう曲を作ってみたいと思うようになりました。

MM:実際にプロになれたきっかけは何だったのでしょうか?

滝川:当時はコンペというものがあることも知らなかったのですが、お世話になっていた作曲家の先輩に色々と教えてもらって。色々な事務所の公募にデモ曲を提出しました。いくつか受かった中から自分がいいと思った事務所を選んで、そこからコンペの情報を教えてもらえるようになりました。

MM:割と順当な流れで評価されて、現在の事務所とのお付き合いが始まったのですね。仕事として作曲をしてみて、何か思い出深いエピソードはありますか?

滝川:最初はキャラクターソングの現場だったんですが、主題歌ではないのでそんなに力を入れていないのかなってイメージを持っていました。でも、現場の皆さんが一番いいものを作ろうと真剣な空気で取り組んでいたので、それには圧倒されましたね。今まで自分がやっていたのは遊びの延長線上でしたが、実際に現場を見て仕事だという責任感を覚え、とても驚きました。

MM:人気声優の小倉唯さんに曲を提供されていますが、率直な感想を教えてもらえますか?

滝川:正直、実感はないです。今まではファンというか遠い存在だと思っていましたが、仕事相手になってみて小倉さんの歌い方や声について真剣に考えることができて、こういう仕事をしていなかったらきっと考えなかっただろうなと思い、いい機会だったというのは感じました。

キャンパス内にMIDIキーボードを持ち込んで作業。朝早く登校するのがコツ

MM:現在は大学生だったと思うのですが、学業とお仕事の時間配分はどのようにされていますか?

滝川:あと2年くらいで卒業なんですが、最近はノートパソコンを購入したので授業の合間にMIDIキーボードを持っていって作業をしています。

MM:キャンパス内で作業しているのですか?

滝川:そうですね、49鍵のMIDIキーボードにペダルを接続して作業しています。MIDIキーボードを出す瞬間なんかは周りに「何か出したぞ」という感じで見られるので恥ずかしいんですけど、気にせずにやっています。

MM:そこそこ目立ちますね(笑) 学校では何を勉強されているのでしょうか?

滝川:法学部なので法律の勉強をしています。

MM:周りの方は滝川さんが商業の作曲家であることを知っているのですか?

滝川:知り合いを作っていないので知らないと思います。

MM:そうなんですね(笑) 毎日のルーティンとか、学業との両立のコツなどがあれば教えてください。

滝川:大学に朝早く行って、パソコンで音楽を聴いたりするのをやっています。授業が始まる前の時間て誰もいなくて静かなので、結構好きなんですよね。学業の両立は大変で、正直予想外でした。休学から明けて1ヶ月くらい経つんですが、休学中は12~13時間くらい寝ていたのが今では6~7時間まで減ってしまったのでどんなに寝ても眠い感じで体にきますね。

MM:もし自分と同世代やちょっと下の世代で「音楽で食べていきたい!」という若い人にメッセージがあれば教えて下さい。

滝川:僕が教えてほしいくらいですが、あえて言うならば早めに和音や調の知識は勉強しておいた方がいいと思います。僕自身はそれで2年間無駄にしてしまった気がするので、基礎的な部分は一旦通っておいた方がいい気がしますね。あとはピアノかギターのどちらかが弾けるようになるといいかもです。僕も最近ギターを練習していてバッキングや簡単なリフなら弾けるようになってきたんですが、作曲中に打ち込みをしなくてよくなったのでとても楽になりました。コンペではそんなに編曲については細かく見られないので、音域を埋めるためにギターを入れたいと思ったときには自分で弾いて時間短縮するなど、そういった強みもあると思います。

目標はバイトなし!音楽一本で生きていくのが卒業後の第一ステップ

MM:今後の目標は何ですか?

滝川:学校を卒業したらバイトを増やすことになると思うんですが、それをなくして音楽だけで生活することが目標ですね。今は1日だけ朝から夕方までバイトをしていて、大学の授業で4日間潰れるとすると空いている日が2日しかないんです。今僕がやっている仕事はBGMの作曲や編曲だったりするんですが、その仕事を2日の休日でこなさないといけないので結構大変ですね。

***

滝川さんが作曲した『Precious.』という曲のコレオグラフィー・ビデオがこちらだ。

これからますます活躍が期待される滝川龍聖さん。学業との両立という多忙なスケジュールの中、目標を持って活動している若者を、読者の皆様とともに今後も応援していきたい。

滝川龍聖さんTwitterアカウント

滝川龍聖

作曲家。小倉唯『Precious.』、TVアニメ このヒーラー、めんどくさい『でぃざすたー☆ひーらー』など。

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