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「#オケ曲あてクイズ」で毎日投稿1000日突破! バイオリニスト・リーナさんのSNS活用術とは?

クラシック音楽好きが集う「#オケ曲あてクイズ」の出題者・リーナさんのSNS活用法

著者:MuseMate編集部  2023/07/29  無料

――MuseMateではこれまで、特集「音楽家のYouTube活用」にて、オンライン発信を上手く取り入れて活躍している音楽家の姿を取材してきた。今回は、昨今巷を賑わせているTwitter(現在のX)でクラシック好きを中心に盛り上がりを見せる「#オケ曲あてクイズ」を毎日欠かさず出題しているリーナさんにインタビューを敢行した。動画配信プラットフォームに留まらない、音楽家のSNS活用の多様なあり方が窺い知れる回となった。

通り名でも活動はできるのか? リーナこと野崎りいなさんにインタビュー

MuseMate運営(以下、MM):はじめに簡単な自己紹介をお願いします。

リーナ:本日はよろしくお願いします。ネット上ではカタカナで「リーナ」なんですけど、多くの仕事は本名の「野崎りいな」でやっています。

MM:活動名の表記は何か意図があって使い分けをされているのでしょうか?

リーナ:いや、もう適当なんですけど、有名なピアニストで「かてぃん」さんがいるじゃないですか。通り名でも全然活動できているのを見て、自分も試してみようと思いました。

MM:なるほど。音楽歴についても簡単にお聞かせください。

リーナ:5歳からヴァイオリンを初めて細々とやっていて、プロになる気はしばらくなかったんですけど、中学2年生くらいから「やっぱり好きだな」と思ってなんとか音大に入りまして、東京音楽大学というところを卒業しました。今、フリーランス12年目です。

MM:音楽以外に、チラシのデザインのお仕事なども積極的にされていますよね。もともと得意だったのでしょうか?

リーナ:そうですね、音楽家のサポートのようなデザイン業も12年目です。学生時代に漫画を描いていて、デザイン自体はやったことがなかったんですけど、フォトショップが使えたという。

1000日間休まず毎日更新!Twitterの #オケ曲あてクイズ

MM:今回は、Twitterでのご活動についてインタビューさせていただきます。「#オケ曲あてクイズ」を毎日更新されていますよね。オーケストラ曲のバイオリンのパートだけをご自身で演奏されて、その動画をアップして何の曲か当ててもらうというクイズ企画ということで。

リーナ:そうです。

MM:面白いなと思ったのが「コラボヒント」という、フォロワーさんが自分の楽器で、同じ曲の別のパートを重ねるという文化ができあがっているところです。


「#オケ曲あてクイズ」(左)、コラボヒント(右)

MM:この企画はいつ頃からスタートしたのでしょうか?

リーナ:スタートは2020年の8月です。

MM:そこから休みなしで毎日更新されているのですか?

リーナ:えっと、2020年の10月末で一旦終わって2ヶ月半だけ休んだ期間があるんですけど、2021年の1月の途中から再開して今まで休みなしです。

MM:そうすると、もう2年以上も休みなく続いているのですね。

リーナ:そうですね。いろんなことが3日坊主だったんですけど、たまたまこれだけは苦がなくて続けられているという感じです。


2023年7月28日をもって「1000日目」を達成している。

コロナ禍の試行錯誤。お家時間の日常をTwitterの毎日更新企画に。

MM:始めたきっかけは何だったのでしょうか?

リーナ:最初はですね、みんな同じだと思うんですけどコロナ禍で演奏の仕事が全然無くなってしまって。私のタイプだと、本番がないと練習のモチベーションを維持できなくなってしまったんです。それで、何か演奏しなければいけないっ決まりを自分の中に作ろうというのが一つ目のきっかけです。

もう一つは、うちの父がクラシック好きで、CDを流して「この曲は何でしょう?」ってやっていたんですよね。もともと家でやっていたクイズを、みんなでやりたいなと思ったのが二つ目です。

MM:なるほど、それは良い話ですね! ちなみにお父様も何か音楽系のお仕事をされているのですか?

リーナ:いえ、父はアマチュアで学生の時にちょっとやってたくらいですね。

MM:もともと日常でやっていたからこそ、Twitterに置き換えても毎日続くわけですね。それにしても、更新を毎日にしようと思ったきっかけは何だったのですか?

リーナ:コロナ禍でずっと家にいなきゃいけなかったときに、最初はYouTubeで毎日更新をしてみたんですよ。それって全員がやるものだと思っていて。YouTubeは毎日更新じゃないとみたいな空気ありませんでした?

MM:たしかに。「YouTube 伸ばす方法」とかで調べると、「毎日更新すべし!」みたいな情報がよく出てきましたよね。

リーナ:それで、「あ、そういうものなんだ」と思ってよく分からず試したんですけど、やっぱり30日くらいで挫折してしまったんです。大変ですよね、YouTube(笑) そこから、無理なくできる毎日更新ってなんだろうと考えて、思いついたのが1フレーズだけのクイズだったんです。

MM:なるほど。何か目的があって毎日更新を選んだというより、初めから「そういうもんだ」という前提があったのですね。

火付け役は指揮者の茂木大輔さん!? 試行錯誤で参加者が徐々に増加

MM:クイズに参加されている方もたくさんいて、楽しそうだなと思いながら拝見しているのですが、回答は始めてすぐからつきましたか? 

リーナ:最初は数ヶ月ほとんど反応なしです。たまに知り合いが可哀想に思ってコメントをくれたくらい(笑) 最初は今とやり方がちょっと違っていたんですよ、出題する時間とかも違って。

それで、途中で選択肢をつけるようにしたんですね。例えば「ベートーヴェンの何番のシンフォニーでしょう? 1、3、5、7のどれかですよ」という4択をつけるようにしたら、ちょっと難易度が下がるじゃないですか。「ああ、それならわかる」という感じで、選択肢をきっかけにチャレンジャーが現れ始めました。

MM:試行錯誤の過程、とても参考になります。

リーナ:その中で「面白いね」って言ってくださる方の中に、指揮者の茂木大輔さんがいて。茂木先生が「これは面白いじゃん」って言ってくれて、茂木先生のシェアの影響力で結構知っていただけるようになったなと思っています。

MM:すごい! 実はぼく(※インタビュアー、壱岐)リードケースに茂木先生のサインがあるんです(笑)

リーナ:え、そうなんですね! そんな感じでちょっとずつ人が増えていって、今は毎日コメントをくださる方が3、40人くらいです。

”匂わせる文化”を楽しむ場が自然発生

MM:コメントはみなさん答えを書かれるのでしょうか? 感想とかも?

リーナ:ダイレクト解答でいきなり答えを書いてもOKだし、「わかった!」だけとかでもいいですよってしてたら、だんだん”匂わせる文化”が生まれてきて(笑) 気を遣ってダイレクトには解答しないっていうのをうまくやる人たちが現れ始めて、すごく面白いなと思っています。

MM:自然発生的な文化、インターネットの面白いところですね。

リーナ:もちろんダイレクト解答で「”運命”ですね」っていうのも歓迎してるんですよ。そうでないと、”運命”だとわかったけれど”運命”の知識はあまりないという人を置いてけぼりにしてしまうと思ったので。でも、実際にはダイレクトは1割くらいですね。

MM:深く楽しんでいる人たちが多いんですね。

リーナ:逆に私が分からないくらい匂わせてくる人もいます。

MM:正解率はどれくらいですか?

リーナ:そうですね、常連さんはすごく強い人が多いんですけど、全体的には難しい問題が多いと思います。相当な常連さんじゃないと毎日わかってるって人は少ないんじゃないかな。

MM:めちゃくちゃ有名な1節というよりは、伴奏だけのところとかもやっているのですね。

リーナ:そうですね。

多い時は30回のリテイク。毎日更新の時間のやりくりは?

MM:出題や正解発表のタイミングはいつ頃なのですか?

リーナ:朝の8時に出題っていうのはかなりきっかりやっていて――ちょうど今日に限って9時になっちゃったんですけど――ほとんど寝坊はしないです。正解発表はその日の夜で、以前は20時にしてたんですけど、最近ちょっと仕事の関係で20時を過ぎることが多くて。ちょっと悩みの一つですね、何時にしようかなというのが。

MM:時間のやりくりについても是非お聞きしたいのですが、まずは選曲から始まると思うんですよ。どの曲のどの部分を出題するか決めて、納得のいくテイクをとって……お仕事との時間の兼ね合いをどう調整しているのかなと思いまして。

リーナ:私はフリーランスなのでフルタイム仕事じゃなくて、演奏とレッスンとデザインの3つが主な仕事で、演奏が入る日もあれば、デザインの方が多い月もあります。かなり自分の意思で調整が効くようにはなっているので、都合の良い日に撮り溜めてっていう感じですね。

MM:撮り溜めもしているのですね。撮り直しとかはどのくらいされますか?

リーナ:それも色々ですけど、多くて30回くらい弾いてます。技術的に難しい箇所を「ここ出したいな」って思ったら30テイクくらいは撮るんですけど、そうでもなかったり今日はもう時間がないってときは3テイクで出すくらいですかね。一発撮りもゼロではないですけど。

MM:なるほど。結構こだわって作ってらっしゃるのですね。

リーナ:ボーダーラインをどこにするかだと思うんですけど、仕事上の点数が80点のクオリティだとして60点くらいで妥協することはあります。

毎日更新は良いことづくし! 苦手なハ音記号も読めるように

MM:この企画をやっていてよかったことを是非教えて下さい。

リーナ:クラシックのオーケストラの曲を語れる仲間が増えたことですね。同業者でもいきなり「ちょっとベートーヴェンについて話したいんだけど」とはなかなかならなくて。それができる仲間が増えたのはよかったです。自分としても知識がすごい増えましたね。曲についてコード進行がこうなってて面白いよねとか、気づくことも増えました。

MM:良いことづくしですね。

リーナ:あとヴィオラが弾けるようになりました! バイオリンはト音記号だけど、ヴィオラってハ音記号なんです。ずっとバイオリンしかやってなかったので、読めなかったんですよね。このクイズでヴィオラの問題をたまに出すんですよ。それをやっているうちにハ音記号も読むようになって弾けるようになったのが一番良かったことです。

MM:苦労したことは何かありますか?

リーナ:技術的に難しいけどここ出題したいなってときに、30テイク撮ったけど「ここはやっぱり出せないな」っていうことはありますね。

実はイラストの方が覚えやすい? 中身でフォローしてもらえるSNSの使い方

MM:冒頭でも少しお伺いしましたが、バイオリニストとして本名でのご活動をされている中で、Twitterでは「リーナ」というアカウント名にアイコンもイラストで、積極的に素顔を明かされていないという印象を受けました。これには何か目的や意図があるのでしょうか?

リーナ:演奏家はやっぱり顔を出した方がいいって言われるじゃないですか。その逆をやってみようというのがひとつですね。イラストだとダメなのかなあという実験です。名前もそうなんですけど、イラストの方が覚えやすいと個人的には思ってるんですよ。

特に顔出しをしていないわけではないんですよね。「コンサートに出ました」っていう報告のツイートでは毎回写真も載せているので、特に顔を出したくないというわけではないんです。


【出典】https://twitter.com/leena__vn

MM:全体的に”実験”という意味合いが強いのですね。今のところ、実験の結果としてはどんな感じですか?

リーナ:顔写真をアイコンにしていた時は、もちろんしっかりお化粧をしてライトが当たっている宣材写真になるわけなので、「素敵な雰囲気ですね」みたいな感じでフォローしてくれる人もいて、もちろんありがたいことなんですけど、それがゼロになりましたね。

MM:なるほど。純粋に企画やお仕事の中身でフォローしてくれる人増えたというところでしょうか。それは表現者としてはやはり嬉しいことですか?

リーナ:そうですね、ちょっと安心した気持ちもあります。ちなみに私は活動名が旧姓なので、今の名前と違うんですよね。それもあって、旧姓とは違うネット上の名前があるのはいいなと思うようになりましたね。結婚後、仕事場で名乗る姓について迷っている人は結構多いみたいですし。

MM:オンラインで自分をアイコン化するという、ひとつのモデルケースになりそうですね。

自分もオタクの一人。「面白いよね」と言い合える仲間を作っていく

MM:この記事を読んでいる方の中には、これから力を入れて発信していきたいという若い音楽家の方もいると思います。最後に、音楽家のSNS活用について何かお考えや、アドバイスがあればぜひお聞かせください。

リーナ:アドバイスになるかどうかはわからないですけど、私のクイズ企画をコメントで盛り上げてくださる仲間たちは、私のファンではないんですよね。私もオタクの一人で、クラシックのオーケストラの曲が好きな仲間同士みたいな繋がりなので、ファン作りとは全然違うやり方になっていると思います。ただやっぱりSNSを通した価値観の共有というか、「面白いよね」ってみんなで言い合えるような仲間ができるのは楽しいことだと思います。私の場合は使い方がちょっと特殊なので、そのくらいしかできてないんですけどね。

MM:みんなで面白がれる企画や場を提供して、コミュニティを作って行くという使い方はとても参考になりました。ありがとうございます。今後のご活動について、どこかでリーナさんの演奏を聴ける機会があればぜひ教えてください。

リーナ:私は地元が埼玉なんですけど、埼玉で主催している愛好家の方々との弦楽アンサンブルの初めてのコンサートが8月20日にあるのでよかったらチェックしていただけると嬉しいです。

リーナ:もう一つは8月13日に、オーケストラの曲を3人で弾こうという企画をやります。昨年も2人で弾こうという企画をやったんですけどそれの進化版で。なんとクイズのご縁で素晴らしいチェリストの方に共演をお願いすることができて。演奏会の中で、曲あてクイズのコーナーももちろんやる予定ですので、チェックしていただけると嬉しいです。

『新世界を三重奏で~オーケストラの名曲を3人だけでお届けする演奏会~』

【日時】8月13日(日) 開場:13:30 開演:14:00 終演:15:45

【場所】「上尾市コミュニティセンターホール」埼玉県上尾市柏座4丁目2番3号

予約はこちらから!

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今回取材した「#オケ曲あてクイズ」は、この2023年7月28日、ついに1000回目を突破した。SNSで同好の士と楽しめる場を提供しつつ、その縁をリアルの演奏会にも繋げていくリーナさん。音楽を通した仲間との出会いをとても大切にしていることが、お話から強く伝わってきた。これからもリーナさんの多岐に渡る活躍に注目していきたい。

☆リーナさんのSNSをチェック!

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